- 採用時の背景調査により潜在的なリスクを発見できる
- 信頼性の高い情報を基にした判断が可能になる
- 不正行為や犯罪歴を確認することで企業を守る
- 背景調査に基づく採用基準の設定がリスク管理に貢献する
- 定期的な調査で企業内部の信頼構築に繋がる
- 透明性のある採用プロセスを確立することで企業の信用を向上させる
企業が信頼できる人材を採用するためには、明確な採用基準を持つことが必要です。効果的な基準設定が、リスクを軽減する第一歩となります。本ページでは、背景調査とその実施方法について解説します。

採用前の応募者調査について
従業員を雇用したものの、採用した者に実は犯罪歴があった場合や前職にて
懲戒解雇を受けていた場合など、採用後に判明する可能性は低いとはいえ、無い
ともいいきれません。その場合、採用した者の犯罪歴や重大な懲戒処分など、
会社にとっては大きな関心事であると思われます。
特に犯罪歴について、職種によっては法的要因に関わる重要な事項となります。
ただ、あらゆる場合に全ての犯罪歴や懲戒処分歴を告知しなければならないと
すると、応募者のプライバシーの問題も生じかねません。
● 企業の調査方法として
① 応募者に直接確認
・メリットとデメリット
応募書からの任意で直接情報を得られる為
プライバシー侵害のリスクが低いが
情報の正確性が検証できない。(虚偽の可能性)
応募者の心情で辞退する可能性がある。
② オンライン上で公開情報の確認
・メリットとデメリット
直接確認せずに情報を得られ、公開の為プライバシー侵害の
リスクが低く公開情報の正当性が期待できるが
情報について、人違いの可能性もある。
(氏名や生年月日が同じ場合など)
又、必要な情報は得れない可能性が高い。
③ 前職の会社に問い合わせ
・メリットとデメリット
客観的な第三者からの評価が得られ、業務に関する
具体的な情報を得られる可能性がある。しかし
応募者の同意が必要で手続きが煩雑であり、前職が
正確な情報を提供してくれるとは限らない。
④ 外部調査期間の利用
・メリットとデメリット
情報収集の専門家による詳細な調査が可能で、会社が
独自では得られない情報が得られる。しかしコストが
かかり、不適切な調査は損害賠償のリスクがある。
応募者の心情を悪くし、辞退の可能性がある。
● 個人情報に該当する範囲と企業が確認するのに適切な範囲
個人情報とは、生きている人に関する情報で、その情報に
含まれる氏名、生年月日などで、特定の個人を識別できるもの
を指します。 例えば、名前、住所、電話番号 指紋などが
これに当たります。
犯罪歴については、個人情報に加え要配慮個人情報に該当
し、通常の個人情報の保護に比して、情報取得時や第三者提供
の規制、漏洩時の対応等について厳格な法規制が及びます。
要配慮個人情報取得には、原則本人の同意が必要であり、
第三者提供は認められていません。
◆ 要配慮個人情報
定義・・・・・・ 偏見や差別を防ぐ為に特に配慮が必要な情報
(人種、信条、病歴、犯罪歴など)
取得条件・・・・ 原則本人の事前同意が必須
第三者提供・・・ オプトアウト方式は禁止
本人の同意が必須
漏洩時・・・・・ 社会的影響が大きく、厳しい行政処分や
刑事罰の対象となる可能性がある
◆ 通常の個人情報
定義・・・・・・ 生存する特定の個人を識別できる情報
(氏名、生年月日、電話番号など)
取得条件・・・・ 本人の同意が必要。ただし、一部の場合
では同意なしで取得可能
第三者提供・・・ オプトアウト方式(一定条件下で本人の
同意を得ずに提供)が可能
漏洩時・・・・・ 一般的な損害賠償や行政指導の対象
※ オプトアウト方式
個人情報を第三者に提供するにあたって、その個人情報を持つ
本人が反対しない限り、個人情報の第三者提供に同意したもの
とみなし、第三者提供を認めること
会社として、仮に調査するとなった場合、上記記載の情報が
含まれているということを念頭に置き、情報を得ようとする前と
情報を得た場合は慎重に取り扱うよう心掛けなければなりません。
会社としては、応募者の犯罪歴や懲戒処分歴を確認するに
あたっては、探索的な情報収集でなく、業種に関わりがある
かどうかの範囲に限り調査を行うのべきだと思います。
応募者側の告知義務と詐称について
会社が求人を出し、応募があった場合で、当然応募者が犯罪歴や懲戒処分歴を申告する法的な義務はありません。
会社から申告を求め、履歴書に「賞罰」欄が設けられていない様式のものである場合などは、採用後に犯罪歴や懲戒処分歴
が判明したからといって経歴詐称には該当しません。
会社側が具体的な申告を求めたが、無申告であった場合や重大な犯罪歴があるにもかかわらず履歴書の賞罰欄に何も記載して
いない場合などは、経歴詐称に該当する可能性はあります。これらが経歴の詐称に該当するのは、犯罪歴や懲戒処分歴が業務
遂行能力や職務適正に直接影響を及し、会社の採用判断において重要な要素となる場合です。
応募者が犯罪歴や懲戒処分歴について事実と異なる申告を行っていたとしても、これを理由に解雇を行うには企業秩序に
影響を与える場合に限ります。
下記例は、業務に関連する犯罪歴である為、企業秩序に直接影響を与えるので解雇の有効性はあります。
① 応募者と雇用契約の締結に先立ち、応募者が逮捕・拘留され2~3年の実刑判決を受け服役していたという事実を
会社に告知していた場合、会社は、その事実に基づいて応募者の労働力、信用性、企業秩序に対する影響等を考慮し
て、契約を締結しなかっただろうと推測され、客観的に見てもそれに相当性があると認められる場合などです。
② 職業運転手が、過去に飲酒運転や重大な交通事故で刑事罰を受けた事実を隠していた場合、業務の適正や安全性
に重大な影響を及ぼす場合などです。
③ 金機関職員が、過去に横領や詐欺で処罰を受けていた事実を隠していた場合、顧客や会社に対する金融機関としての
信頼性が損なわれる可能性が高い場合などです。
一方、飲食店のスタッフが、私生活で軽微な窃盗を黙っていた場合や一般事務の方が交通違反を秘匿していた場合などは、
業務に直接関係ない為、解雇の理由としては不十分である可能性が高いです。
応募者に犯罪歴を申告させる場合は、犯罪歴は要配慮個人情報に該当するため本人の同意が必須となります。また、通常の
個人情報に該当する懲戒処分歴についても、取得にあたっては原則的には同意が必要となります。
取得にあたっての同意書は、証拠化のためにも書面で取得し保管しておくことが望ましいです。
そのような調査を実施する以上、応募者にとっては気分的に嫌な気持ちになったり、プレッシャーに感じたりすることで
辞退する可能性もあります。 それでは求人の意味をなさなくなります。
採用応募の段階で実施する場合、応募者の心理的配慮や心情も踏まえ、犯罪歴や懲戒処分歴について、もし確認するつもり
であれば特に必要な場合(職種に関係する事や会社として調査すべきと判断した場合など)に限り実施するのが無難です。
前職への照会を行おうとする場合、あらかじめ応募者にその旨を明示しておき対象項目に懲戒処分歴を含めることを事前に
伝え書面又はメールにて同意を取得して実施すべきです。対象とする懲戒処分歴については、自社の職種や業務に関連する
範囲に限定し実施するのが適切です。